世界樹55:ギルドは旅立つ
メディック♀「じゃあ、バードちゃんや毒氷アルケミスト君は、このままエトリアに残るんだ」
バード♀「ま、あたしは元々、ここの出身だしッ。親もそろそろ顔見たがってるし、いったん実家に帰るわッ。ま、スキを見てまた冒険には出るつもりだけどねッ! だってあたしは絶対、大陸イチの吟遊詩人になって、世界の真実を人々に伝えて回るんだからッ!」
毒氷アルケミスト♂「ボ、ボクもここの迷宮に、まだいっぱい、あるからね。研究テーマ……。古代の謎、無数の遺産、オーパーツにミッシングリンク……うふふ、そそられるなぁ。うふふふふ……」
メディック♀「え、えーと……な、謎の解明、期待してるね、うん……」
パラディン♂「オレはエトリアを出るぜ! けど、リーダーたちとは一緒に行かない。オレ一人の力でどこまでやれるか、挑戦してみたいんだ。ま、いつかハイ・ラガードでばったり、顔を合わせることもあるかもなっ!」
レンジャー♀「まあ、アルケ様にいただいた『真龍の剣』もありますからね。心配はありますまいが……エトリア一のギルドの『盾』たるもの、その名に恥じぬ活躍をなさいますよう」
パラディン♂「そっちこそ、オレがいなくて大丈夫なのか? ハイ・ラガードの敵はたぶん、エトリアより手ごわいぜ」
レンジャー♀「わたくしがついておりますから、何も問題はありません。戦闘面も、金銭管理も、ギルド運営から地図管理まで」
パラディン♂「……あいつ、リーダーのくせに一撃死がデフォで金遣い荒くてついでに迷子体質なんだったよな……。てか、よくオレらここまで来られたよな、今更ながら……」
ソードマン♀「『わたしもそろそろ、新しい冒険に出るわね。楽しかったわよ、またどこかで。――ダークハンター♀』」
アルケミスト♂「今朝起きたら、宿の扉にこの手紙が挟まってたんだ」
ソードマン♀「あいつらしいわね、何も言わずに出ていくなんて。まあ……生きていれば、きっとどこかで会うこともあるでしょう。あいつも、あなたも、冒険者である限り」
アルケミスト♂「……師匠」
ソードマン♀「どうしたの、辛気臭い顔をしちゃって。新たな迷宮に挑むのは、冒険者の最高の幸せでしょう? もっと胸を張って、堂々となさい。あなたはもう初心者でも……『できそこないの御曹司』でも、ないんだから」
アルケミスト♂「はい、師匠」
ソードマン♀「私がいなくても、もう大丈夫よね?」
アルケミスト♂「……はい、師匠」
ソードマン♀「アルケ。私はもう、あなたの剣の師匠じゃないのよ?」
アルケミスト♂「いえ。師匠はずっと……俺の師匠です。俺が剣を捨てても、別のギルドを結成しても、ずっと」
ソードマン♀「……そう。あなたがそう思うなら、……そうね、最後に一言だけ。
――アルケ。この先、どこで何があろうとも……、自分の信念を、最後まで貫きなさい」
メディック♀「――アルケくん、遅いなあ。今日は寝坊はだめだよって、あんなに念をおしてたのに……」
レンジャー♀「そろそろ出立いたしませんと、ハイ・ラガード行きの大陸間蒸気機関車に乗り遅れてしまいますね」
メディック♀「そ、そうだった! あれに乗れなかったら、次の列車って……」
レンジャー♀「10日後となっております」
メディック♀「たっ、たいへん! アルケくんっ――」
レンジャー♀「落ち着きなさいまし、メディック殿。そう急がれると、あなたの場合……」
メディック♀「きゃあああっ!?」
……足を滑らせひっくり返り、鞄の中身をぶちまけるメディック。
その前へ駆け寄ってきた黒衣の少年――否、既に青年へとさしかかったその彼が、慌てた様子で手を差し伸べる。
アルケミスト♂「大丈夫か、メディックちゃん? ケガとかしてないよな?」
メディック♀「アルケくん!」
差し出された手を取り、メディックの少女が笑う。
飛び散った荷物を手際よく集めて回りながら、しっかりもののレンジャーが、穏やかな声で促した。
レンジャー♀「さあ、お二人とも。ぐずぐずなさっている暇はありませんよ。新たなる迷宮へ向かって――出発いたしましょう!」
追記:意気揚々と出発したパーティは、予想通り汽車に乗り遅れ、ハイ・ラガード到着がいきなり10日ほど遅れることになったという……
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